ビリーアイリッシュと椎名林檎とジェンダーの話
今日はすっかりハマっているBillie Irishの話をしたいと思います。
Bad guyなんかは、日本でも認知度抜群ですね。
わたしの好みはというと、もっと暗めです。
お気に入り楽曲
Bellyache
アンニュイに独り言を零すような低音で始まり、
いっしょにコーラスしたくなるシンプルかつキャッチーなBパート、
不思議な高揚感で踊りたくなるサビ、
これが友人の死体を埋めに行く道中の歌だなんて。
idontwannabeyouanymore
Billie Eilish - idontwannabeyouanymore (Vertical Video)
「もうあなたみたいになりたくない」
これは過去の自分へ向けた歌。
ピアノで切なくスローな8分の6拍子にまとめつつ
ビート感も楽しい曲です。
When the party's over
Billie Eilish - when the party's over
目から黒い涙を流す、ホラーなMVがインパクト大だけど、
詩をよく味わって欲しい1曲。
かすれた高音が悲しくて、感傷に浸れるはず。
All the good girl go to hell(良い娘はみんな地獄行き)
ビリーの楽曲で、音楽的にはそこまで好みじゃないんだけど、
このワンフレーズはいいよね!というのが、これです。
All the good girl go to hell.
歌詞は環境問題のことを歌っているんですけど、同時に
いわゆる理想の女の子像から外れてるんじゃないかって
卑屈になっているわたしみたいなのを、励ましてくれる、
賛美歌みたいな曲だな~って勝手に思っています。
似たフレーズでいうと、My boy
という楽曲の、
”If you want a good girl, then good bye.”(「いい子」がお好みなら、サヨナラ。)
が最高でした。
シングルでいるとこんなにも強くいられるのに、
いざ恋人ができると、途端に「いい子」になろうとして、しかもそんな自分が嫌…。
そういう、しっちゃかめっちゃか具合を歌にしてくれてるって思います。
だから、みんなが「これはわたしの歌だ!」と思えるんですね。
わたしにとって女性歌手ってなんだろう
もともと椎名林檎の大ファンで、初期アルバム「無罪モラトリアム」や「勝訴ストリップ」の世界観が好きだったんですが
ビリーアイリッシュのアルバム「dont smile at me」「WHEN WE ALL FALL ASLEEP. WHERE DO WE GO」を聴いてとっても近い感覚を覚えました。
というのも各曲がジャンルレスな音楽であるのに加えて、
歌詞を通して見えてくる等身大の同世代の女の子の姿に共感を覚えて、
なんだかたまらなくなってしまったんですね。
バッドなフェミニズム
昨今何かと炎上を引き起こしがちなジェンダーの話題。
フェミニストは、とくに日本のTwitter界隈ではすっかり嫌われ者のようです。
たしかにわかります。
過剰反応するオバサンとか。
すぐ女性の性を搾取している…とか言って…
結局男性蔑視なのでは?とか…。
でもわたしなりに理想のフェミニストの在り方というのがありまして、
作家ロクサーヌゲイがエッセイで書いている、バッド・フェミニストっていう在り方です。
「フェミニズムの主流からはずれてしまうような関心、個人的資質、意見を持っているけれど、それでもなおフェミニスト」
すごくすごく腑に落ちた気がしました。
品行方正な淑女でいる必要はない。
もっと滅茶苦茶でいい。
好きに生きたら良い。
そして、必要なときはいつでも権利を主張すべきなんです。
わたしの好きなアカデミック雑誌「ユリイカ」のビリーアイリッシュ特集号に
宮永隆一郎氏の素敵な記事
(「あなたがゲイならよかったのに」を歌うのはだれ?ビリーアイリッシュとすべてであること)があって、彼女とバッド・フェミニストについての言及があったので、これを参考にしてるのですが。
ユリイカ 2019年11月号 特集=ビリー・アイリッシュ ―i wanna end me...闇を跳梁する歌声―
- 作者:ビリー・アイリッシュ,崎山蒼志,水野しず,tomad,田島ハルコ
- 発売日: 2019/10/28
- メディア: ムック
どきっとするような暗いトピック、タブーとされそうなトピック
を扱ってるところが魅力です。
金銭と性の世界、ワンナイト、どろどろの嫉妬心、自己嫌悪、
人を殺めてしまうほどの憎愛、自傷願望
これらをアングラじゃなくって、J-POPでやってのけよう、
ポップ・カルチャーのフィールドで表現しよう、という姿勢でいるから、
わたしは彼女らがすっごく好きなんだ、っていうことに気づいたんです。
その一方で、未来に対する明るい展望、世界の美しさ、愛の喜び
も歌にしています。
これ全部が共存するのが、女の子(わたしが女性なので、あえて女の子と限定しますが)のリアルだと思うんです。
「昨日あんなに消えたかったんだけど、
今日はちょっといいことがあって、人生って悪くないかもしれない、と思えた。」
そういうリアルが詰め込まれていると感じます。
世の中に素敵なバンド、音楽ってたくさん溢れていて、もちろん彼女ら以外にも
男性ロックバンドとか好きなのいっぱいあるんです。
「これが言いたかったんや」「これ分かってほしかったんや」という、自分が女性であるがゆえに悩まされてきた様々な事象、
それが、かゆいところに手が届くように描かれているからだなと思います。
これからもずっと聴き続けるんだろうな~と。